普結くんは、桃にイジワル。
「なんで急にライン交換しようなんて言うの?」
「、ごめんなんて言った?」
数学の授業中、
前を向いたまま頬杖をついた普結くんが声を潜めて何かを呟いた。
どうやらあたしにむけて投げられた言葉だったらしい。
「なんで今さらライン教えてなんて言ったの?」
「今さら、って…。
昨日ふと家帰って思ったんだよね
そういえば普結くんのライン知らなかったなって」
「…ふぅん」
頬杖をついたままの普結くんは、不意に上目遣いで此方に振り向いた。
「…家帰ってからも俺のこと考えてたの?」
「………は?」
何故かどことなく嬉しそうな普結くんの言葉に、そんなつもりはなかったのに顔が熱くなっていく。
「ちがうっ!
そうじゃなくて、そう言う意味じゃー…」
「あー八宏さん、あんまおっきな声出すと…」
赤くなる顔をどうにか元に戻そうと必死なあたしの頭上に
ふわりと影が落ちる。
「授業中に一人言とは良い度胸だなあ八宏。」
「…すみません」
怖い顔をしてあたしを見下ろす先生に頭を下げながら思う。
…全部普結くんのせいだ。