普結くんは、桃にイジワル。



強すぎる太陽の日差しを容赦なく浴びながら、

それでも必死にボールを追いかける鳴海くんはなんだか眩しい。


「ああいうのを青春っていうんじゃないかね、鈴木少年」

「…そうだな…」


目を細めておばあちゃんのような眼差しでグラウンドを眺めるあたしたちは、


しっかり太陽を避けて日陰へ避難している。


…この様子が青春から一番遠いんじゃないか。


そんなことを考えていると、
不意に立ち止まった鳴海くんが此方を振り向いた。


「あ、こっち見た」

「おーい鳴海クーン」

「頑張れーえ」


思い思いに声をかけながら手を振ると、笑いながら手を振り返してくれる。


「ほら普結くん、鳴海くんだよー」

「……………」

何故か何も言わない普結くんは、
しゃがんだままじっと鳴海くんを見つめている。


見つめているというか睨んでいる、という表現のほうが正しいような。



おかしな普結くんの様子に首を傾げつつ、
鳴海くんへと視線を戻した。



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