普結くんは、桃にイジワル。
横からビシビシと感じる視線を
気にしないフリするのがやっとで、
ふと気を抜くと、1時間前に抱きしめられた腕の感覚を思い出してしまう。
「八宏さん、なんか顔赤いよ」
「……………」
「ねえ無視?
なんで無視すんの?
悲しいなあ泣いちゃう」
「…………………」
「…へえ、意地でも無視するんだ。
そんな態度とっていいと思ってんの?」
若干暗い色を帯びた声に身構えると、
シャーペンを持ったままの右手がふわりと何かに包まれた。
細いけど大きな手が、あたしの手を好き勝手に触る。
「無視しないでよ」
言いながら、するりとなぞられた手の甲。
ぞくりと背筋を何かが駆け抜けた。