普結くんは、桃にイジワル。
ということは。
あたしより後ろの席はまだ一列あるから、
少なくとも後ろに座ってた席の人はみんな
あの出来事を見ていたわけだ。
とにかく振り回されっぱなしのあたしは、そこまで考えが至らなかった。
「最悪だ…
授業中にみだらなことを平気でする女だと思われてしまう…」
「みだらって…
なにしてんだろうなーとは思ったけど…」
何かを煽るみたいに、
優しく撫でられた手の甲。
ゆっくりとつまんだ、あたしの人差し指。
あの手つきを思い出すだけで顔が赤くなっていくのが分かる。
右手をぎゅっと押さえて顔を俯けたあたしを覗き込んで、
リエちゃんが言った。
「…ねー桃さあ、
もしかして柚山のこと…」
その先を言わせまいと、
勢いよく顔を上げる。
置きっぱなしだったお弁当を掴むと
再びおかずを口に運んだ。