普結くんは、桃にイジワル。
「あの…、
柚山くんはいますか?」
放課後の教室を訪ねてきたあたしより小柄な可愛らしいボブヘアーのその顔を見た瞬間、
嫌な予感がした。
女の勘って奴だろうか。
咄嗟にいない、と口が動きそうになって驚いてしまった。
いつからあたしは平気で嘘をつける女になったんだろう。
教室をちらりと覗けばいつものように頬杖をついて文庫本を広げる普結くんの姿がある。
ボブヘアーの女の子はあたしの背後から教室を覗いて、
ぱっと花が咲いたように笑った。
「柚山くん!」
「……あー、笠原さん
待ってて、行くから」