普結くんは、桃にイジワル。
整った顔がどんどん近づいてきて、
あたしは固まったまま。
鼻先が触れそうな距離で止まった普結くんの顔は、
暗くて見えない。
まばたきする音が聞こえそうなほどに近い距離だった。
「ごめん」
ぽつりと吐かれた言葉に目を見開く。
「…なにびっくりしてんだよ」
「え、あたしの顔見えるの?」
「見えないけどなんとなくびっくりしてんじゃないかと思った」
正解だった?
言いながら首を傾げた普結くんのせいでますます顔が近づく。
「ちょっとまって、これ以上近づくと…!」
「近づくと、なに?」
低く潜めた声が耳をかすめた瞬間、
頬に温かい何かが触れた。
さらりとしたそれは、
擦り寄るように動く。
「ちょっと、まって、
何して…」
「動物っぽいね、これ」
冷静に自分の行動を分析するように小さく呟いて、
あたしの頬に自分の頬を当てたまま楽しそうに笑う普結くんに
あたしの頭はパンク寸前だった。