わんこな後輩彼氏の話。
って!
何考えてんだろ!
自分で自分の首絞めてどうするよバカ!
待って、落ち着け。
そう言う想像は、しちゃ、だめだ、しちゃだめ。


「ねー遥叶」
「な、なに?」


突然名前を呼ばれて、桃萌ちゃんの首筋に埋めていた唇を少し上げる。


「ごきぶり」
「……へ?」


すっと距離を取ってみると桃萌ちゃんの目線は一か所に集中していて。
目線の先を振り返って見ると、黒い……虫。


「遥叶」
「は、はい」
「退治、今すぐに。じゃなきゃ帰る」
「は、はいーっ!!!」


僕はあわあわと立ち上がると、黒い虫の処理に走った。
何せ桃萌ちゃんは大の虫嫌い。
中学の頃の部活中もトンボが入ってきただけで大わらわ。
楽器に虫が飛んでこようものなら大泣きだった。
その度に僕が慰める役を買って出ていたんだけど。
役得。
まぁ、数少ない桃萌ちゃんの苦手なものだよね。


「桃萌ちゃん〜、退治したよ〜っ」
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