可愛らしさの欠片もない
・離れたい
変な疲れにみまわれて、階段を上がる脚まで重くなっていた。
ブー。…あ…先輩だ。
【さっきは本当に有り難う。助かった。ポーチは明日返すね】
あ、渡したままだった。でも困りはしない。
【大丈夫ですよ、いつでも】
【有り難う。もう帰ってる?】
【はい】
【部屋によね?】
【はい】
もう、目の前だ。
【大島さんには気をつけてね】
…え?
【じゃあ、おやすみ(ハート)】
あ。気をつけてねって…。どういう意味だろう。ちょっと遠慮しようとはしてるけど、それは大島さんが先輩のことをってこともあるし。
詳しく言わないところが先輩らしいのだけど。
何に気をつけたらいいのだろうか。そのくらい自分で考えなさいってことだと思うけど。
あ。…忘れてた。
【おやすみなさい】
慌てて送った。ふぅ。
…よく解らないけど、気をつけてというのだから、気をつけなくちゃね。
今日、甲斐さんは来ない。多分。連絡は来てないし。私から来ますか、と聞いたことはない。聞くより先に来るときは連絡があるってことだ。
いつものご飯に行くということは伝えてある。
こういうことに一々どんな人と行くんだ?男なのか女なのかとか、早く帰れとか、言わないのがいい意味で大人なんだと思う。そればかりだとちょっと寂しかったりもするんだけど。少しはやきもち、妬いてほしい。こういう風に頭に浮かべる内容が、立場を変えたら自分が気にする内容だということだ。だから自然と頭を過ってる。…子供だ。
私なら、大人ぶって聞かなかっとして、やっぱりそこは無理をした結果、気になる。結局、最終的には不機嫌になる、そういう感じだと思う。
……仕事で遅いと聞いていると、それまでの時間は仕事をしてると考えるのが普通の思考で、例えば、それを、そう言っているけど、その時間、仕事だと誰が解るのって、そんな風に疑いを持ち始めたらもう駄目だ。解らないこと全てを疑って、どうにもならなくなる。
……こんな考え、過らなければ良かった。無駄に不安になることを自分から作り出してしまった。今日は何をしてるんだろうってくらいに留めておけば良かった。
何してますか?ってメールしたら、仕事だって、返ってくるのかな。
……試さないけど。それって鬱陶しいだけだと思うし。……。
………探ってる訳じゃないから。……。
【何してますか?】
…結局このざまだ。
【仕事だ】
…ほらね。…するんじゃなかった。