可愛らしさの欠片もない
【具合はどうですか?
今まで休んだことなんてなかったので心配してます。実は、今日、私と大島さんのことで誤解をされました。先輩を駅まで送った後で大島さんと一緒になったのですが、その歩いてるところを見られたようで、そういう関係なのではないかという感じで直接言って来られました。違いますと言ったのですが、彼女のことだから、多分聞き入れてくれてはないと思います】
具合の悪いところに…自己中でこんなメールをして。自分のことは自分で解決しないといけないのに。でも、知っておいてほしいのもあったから。
私と大島さんは何でもなくても、実はなんて思われたくない。それはないとは思うけど。だって私には甲斐さんが居る。それは先輩は知ってるんだから。
………ん。
大島さんも、先輩も、何も言ってこない。先輩は横になっていてそれどころではないのかもしれないけど。…大島さんは、あんなに早くメールを欲しがっていたのに。
よし、……ぼちぼち帰ろうかな。多分大丈夫だろう。
更衣室のドアをそっと開けた。…ほぉ。明かりもついていなかった。良かった…、思えば朝、大体言いたいことは言ったんだ。だから、もうしつこく聞いてこないのかも。だって想像で作り上げた物には限界がある。
ブー。あ、大島さんだ。
【そんなこと言われたんだ。俺は別に構わないよ】
…え?
【反応しない方がいいんでしょ?だったら、鎮まるまで別に、言いたいように言わせておけば?噂なんて、所詮、噂。それも事実とは違うんだから。そうだよね?】
ん?…そうです、よ?
【はい、騒ぎ立てない方が無難だと思います】
【だったら放っておこう。俺らは別に今まで通り、してたらいいよ。これで変に態度を変えたらそのことまで関連付けて噂が増えそうだから】
なるほど。先読みですね。
【そうですね】
あ。
【先輩にも一応、知っておいてほしくて、連絡しました】
【なんて?】
言って来たかってこと?
【まだ、返信はありません】
【そうなんだ。あ、今日、休みだったね】
【はい】
【体調不良?】
多分そうだと思ってる。詳しくは…。
【多分】
でも、そうかどうかは確かめてはない。