可愛らしさの欠片もない
「言われてしまったな」
「え?」
「それを言いたくても、無責任過ぎる、虫がよすぎる、そう思ったらずっと口に出せないでいた。俺の不誠実はありのまま証明されてるが、誠実さは…離婚が成立しないと無理だ。俺だってそう若くない。長期になったらどうなるか…不安だ。こういう関係、長くなって優李に…もう無理だと言われるかもしれない。優李に好きだと言われて、それだけで終わるつもりでつき合おうとは思ってない。承諾したときから、優李のこれからを考えた。俺よりは若いだろうけど、優李だって、この告白に人生がかかってるのかもしれないって。告白するだけで精一杯で考えてないって言ったけど、つき合って終わりってなんて、それを考えたら、それはないだろうって、きっと思う、そう思った」
「甲斐さん…」
「何もない、何も安心させてあげられる状況ではないけど、妻を説得する。俺は久田じゃない、優李と一緒になりたいから別れてくれって」
「でも、それだって…」
拒否するかもしれない。
「それでも説得する。それしかないから」
「私…、いつでも会えますよ、奥さんに。私の存在をはっきりと示したいのなら、いくらでも、何度でも会います。そして、正真正銘、私が、甲斐さんの好きな人だって、見せつけてあげます。例えばこんな風に…」
甲斐さんの胸に手をついた。そして、甲斐さんの顔を包んで唇を重ねた。