可愛らしさの欠片もない

「当然、私があなたのところに来ることは駿脩は知らないわ」

そうでしょう。知ってたら私をここには居させないと思うから。

「あなたが居ようが居まいが、あなたの存在で離婚は進まない。私はあなたを相手にしないから」

根深いのは学生の頃芽生えてしまった嫉妬なんだ。

「では何故私のところに?」

「駿脩がどんな子を相手にしてるのか、見に来ただけ。私よりは若いけど…普通なのね」

容姿は嫉妬の対象にはならなかったってことね。…あなたと比べられたら…それは…同じ土俵にはあがれません。
気持ちが安定してないんだ。綺麗なのに…こんなきつい顔つきをして…。穏やかな顔になればきっと…もっと綺麗なのに。

「…勿体ないですね」

見切り発車のようなものだ。どう転ぶかは私にも解らない。

「え?」

「誰もが羨むような容姿をしてるのに」

「な、に?いきなり」

「一般の人じゃないくらい、綺麗でスタイルもいいのに。あ、きっと学生の頃はミス◯◯とかでグランプリとかになってたんですよね、きっとそうだ」

「だったら、なに…よ」

なってたんだ。フフ、やっぱり。

「それだけです」

「それだけって…」

「そうして、沢山チヤホヤされてきたんだろうなって、思っただけです。私なんか、何一つチャームポイントとしてあげられる物もありません。あなたは…大きな目?高い鼻?シャープな唇?…小顔?挙げたらきりがないですね。チャームポイントはどこですかってきっと聞かれてる。そのとき、どこがそうだと答えたのですか?…全部です、と答えたのでしょうね」

「何…褒め殺し?」

「いいえ、世間話です。もういいですよね。お帰りください。元々私には用がないのですよね。別に住むところ、変わったりしません。私は変わらずここに居ますから。何かあったらどうぞ?
さっきより表情、変わりましたね。能面のようだったのに、動くようになりましたね」
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