可愛らしさの欠片もない

「…俺、何も言ってあげられない。頭が悪いからさ、纏まりがつかないんだよ」

いいんです。何も言わなくて。その方がいいんです。

「……嘘にちょっとだけ本当。本当にちょっとだけ、嘘って、とても巧みてす。疑いながらも信じなくちゃって、そう思ってしまうから」

「あ、だけど、…なんだよ…なんなんだよ」

そう、なんなんだよ、その通りです。私はアシストをしたってことです。

「何よりも大事なものがあったってことだと思います。まんまと、利用されました」

「俺、ごめん。咲来さんに相談されたとき、そんな凄い想像なんて、って言って。あのときなら、まだ、こんな風にはならずに…」

それは無理でした。私、本当に好きでしたから。

「もう、無理だったと思います。信じなくちゃって、自分で思ってたから。
嬉しいことがあったときと、悲しいことがあったときと、そんなときに飲むようにしてるんです、これ。飲める人の真似で」

「……酷いよ、こんなんで、幸せになれると思ってるのかな…」

「私の想像通りというより、私が、私から上手くはまってしまったのだと思います。私が自然に自分から動いたんですよ」

「だからって……はぁ、酷いよ。心を利用するって一番酷いよ…」

…大島さん。私、私自身がまだよく解ってないような、そんなところに居るんです。

「大島さんに泣かれては、私は泣けません。ていうか、泣きません。涙が出ません。私、冷静なんです不思議と。
だって、やっぱり出来すぎてるって、どこかで思ってた、上手く行き過ぎてました。だから、泣けないんですよ」
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