可愛らしさの欠片もない
「……はぁ、優李、離婚、成立したんだ」
話すと息がかかる…、首元が熱い…。
「…甲斐さん」
「…人騒がせが過ぎる…大概だ。いいか?よく聞くんだ。誰とも、何も、関係ない。俺が一緒に居たいのは優李だ。結婚したいと思ったのは優李だ。…俺に子供ができるなら、優李との子だ。誰でもない、優李との子しか作らない。いいか?優李だけだ」
「甲斐さん…」
「俺と久田が結婚するために優李を利用したって?…はぁ、何を馬鹿なことを考えてる?ん?ないって言っただろ?そんなこと、あり得ない。そんな仲じゃないんだ」
「…はい、うん…」
…ごめんなさい。
「そんな馬鹿なことは二度と考えるな。いい加減信じてほしい、優李…勝手な想像は今後一切禁止だ」
「はぁ、ハハ…。ごめんなさい。本当に馬鹿でごめんなさい」
大島さんにも謝らないと…。本当、無駄なエネルギーだ。そこまでして初めて全てが信じられたなんて…。
「…ごめんなさい、甲斐さん」
「…もういいんだ。優李、なんか食べよう。そうだ、お粥食べるか、待ってろ、作るから」
甲斐さんの体が動いた。
「あ、甲斐さん…」
待って。
「ん?」
今はこうしていたい。…お粥よりずっとこっちがいい。
「離れないで…。まだもう少し、このまま、…抱きしめていてほしいです」
あ、こんな言葉…出るなんて…。恥ずかしいとも何とも感じなかった。
「…優李、ああ、好きなだけ、いくらでも抱きしめる。俺だってずっと抱きしめていたいんだ」
はぁ、うん。甲斐さん…。今が現実、腕の中にある。…離しちゃ駄目だ。信じることが全て…。