可愛らしさの欠片もない
「ごめん、嘘だよ……覗いてみたくなったんだ、君の心。あんまり君が、その人のことを嬉しそうに話すから。会ったっていうのは嘘。会ってなんかない…俺は嘘をついた」
あの、…。
「大島さん…」
「…メールは君が教えてくれた。何かあったときに連絡を取り合えるからって。俺も、親父の世話をするっていっても、その、気持ちが落ち込むこともあるだろうからって。
君をおんぶして帰って来たことと、メールを教えてくれたのは君だってことは本当。……男に関することは嘘。申し訳ない、信用ならない男に一気になっただろ?」
「それほどまでは…」
そのことも記憶にないのだから…?会っていたと通されても解らないと言えば解らない。でもそれは、向こうが私を認識してるってなる。だからやっぱり、この部分は嘘だ。
服装が違ってる。当然か。私をここまでおんぶして来て自分の家に帰ったらシャワーくらいするだろう。それどころか、時間的にはお風呂に入って寝てたって時間だ。それをまた…うちまで来るなんて……。
上下のスウェットはパジャマ代りなのだろうか。近所ってどれだけの距離の近所なんだろうか。私は知らないんだ…。
「疑問は三点だけ?」
「…え?はい」
いけない、どれだけ沈黙してたんだろう。
「無事に寝てたと思う?」
「え?…は、い?」
どういう意味?誰が?私が?私なら寝てましたけど?
大島さんは、また一気に麦茶を飲み干した。
私はつぎ足さなかった。