可愛らしさの欠片もない
酒豪とは到底違うけど、これが私の日課の一つだ。日課といっても毎日というものではない。お酒なんて…特に飲みたいと思う代物ではない。多少でも飲む気になるのは、今日のようなことがあった日にだ。辛いことがあったとき、もしくは嬉しいことがあったとき。とても両極端だけど、心が揺らいだときにと決めている。
普通に飲める人の真似事だ。…みんな美味しそうに飲んでるから…。単純にそれが羨ましい。残念なことにジュースのような口当たりの物を美味しいと思って飲んだとしても、私の体にアルコールは合わない。そういう体質だ。
今日はいいことがあった、そう、あの人。あの人を見かけたから。…フフ。どこの誰だか解らない人だけど、久々雰囲気のいい人を発見できたから。そう、出会いとはほど遠い、ただの発見だ。…はぁ。でもその幸運から、知らず知らず一日中気持ちが弾んでいた。楽な一日だった。楽?楽っていうか、苦にならなかったが正しいかな。ほぼ同じ仕事の繰り返しだから。つまらなくならなかった、かな…。まあどうでもいい。ふぅ。…んー…いくつくらいなんだろうか。年上であることは間違いなさそうだけど。さっぱりとすっきりした顔…、でもどこか憂いがあったな…。はぁ、それが妙に…朝から色気を感じた。だから惹き付けられたのかもしれない。憂い…気怠さ……朝帰り…だったとか。…んー、ないことではなさそう。
…また会えるかな。会えるといいけど…。滅多にないことだからか、どうしても期待してしまう。
どこかあの辺に勤めてる人だといいな…。そしたら会える可能性は高くなるかもしれない。日帰り出張だったとか、それはなしにしてほしい。
…これは行き過ぎた妄想だけど、願わくは彼女が居ないと尚いいのに、と真っ先に望んでしまう。こういう出会いの人、既に人のものって、相場は決まっていることが多い。あれだけ素敵な人だもの。こっちには解らないから。そう上手くは行かないように世の中はできてるものだものね。
せめて夢でも見られるといいんだけど。その程度だっていい。だけど、それもそう、願っても上手くはいかないものなのよね。