旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

「うん、とっても。また連れてきてね」

「ああ」

 彼はぎゅっと回した腕に力を込めた。

「ずっと、こうして君と一緒にいたいと思っていた」

「え……」

「もう離さない。絶対に、誰にも渡さない」

 くるりと体を反転させられ、顔を覗きこまれた。濡れたような彼の瞳に吸い込まれそうになる。

「君は俺のものだ」

 彼はポケットから何かを取り出した。大きな彼の拳が、私の前にそれを差し出す。

 彼が上向きに手を開くと、そこには小さなケースがちょこんと乗っていた。彼がそれを開くと、今夜の夜景に負けず劣らず輝く指輪が現れた。

「これは婚約指輪。ちょっと派手だろう?」

 言いながら彼は指輪を摘み、私の左手を取った。薬指にするするとそれを通す。

 ダイヤが光る指輪は、ぴったり私の薬指におさまった。まるで初めからそこにあったみたいに。

「素敵……」

 胸がいっぱいになって、それ以外の言葉が出てこなかった。代わりに涙が溢れそうになる。

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