旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 彼と過ごしてきた日々を思い出せない罪悪感も、初めて全てをさらけ出しているような不安も、彼に揺さぶられるうちに溶けて消えていく。

 代わりに、彼への愛しさが次から次に目尻から溢れて、頬を滑り落ちていった。私は強く彼の背中に回した手に力を込める。

 ねえ、私の旦那様。あなたのことを忘れたりして、私は悪い妻だね。




「萌奈。そろそろ起きろ」

「ううん……」

 低い声に朝を告げられ、私は目を覚ました。目をこすってから開けると、至近距離に景虎の顔があった。

「わあ!」

 びっくりして体を反転させた。胸が早い鼓動を打つ。イケメンのアップは寝起きの心臓に悪い……。

「まさか、昨日なにがあったか忘れたと言うんじゃないだろうな?」

 背後で景虎が上体を起こす気配がした。ぺちぺちと肩を叩かれ、顔を覆う。

「覚えてます」

 むしろ、覚えているからそっちを見られないんだってば……。

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