旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 彼は付き合っているときの記憶があるだろうけど、私にしては初めてと同じことだったんだもの。普通の顔で向き合えないことくらい、察してほしい。

「恥ずかしがらなくていい。君はとても綺麗だった」

「言わないでいいから!」

 勢いでお風呂にも入らずにこんな展開になるとは。後悔が押し寄せるけど、今さらどうしようもない。

「はは。さあ、先にシャワーを浴びておいで。仕事に間に合わなくなる」

「ハッ!」

 ガバッと跳び起きた私を見て、景虎は肩を震わせて低い声で笑った。

「嘘だよ。今日は土曜。仕事は休み」

 したり顔で笑う顔に、へなへなと力が抜けた。そっか。そうだった。ちょっと混乱した。

「もう!」

 意地悪な彼の頭に掛け布団をかけ、浴室へと急いだ。もちろん露天ではない方へ。

 浴室のドアを閉めると、正面の鏡に自分の姿が映る。鎖骨や胸に赤いあざが残っていて、一気に顔が熱くなった。

 ああ、私、本当に彼と……致してしまったのね。

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