旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
結婚式。彼の説明では、私たちは籍を入れただけで、式はまだだと言っていた。彼の仕事の都合で先延ばしになっていたんだっけ。
それどころか私が記憶を失くしてしまい、ますます見通しが立たなくなっていたのだ。
「君はどう思う?」
珍しく遠慮がちな彼の言葉の意味を考えた。きっと、私の心の準備ができているかが心配なのだろう。
「いいですよ。式、具体的に考えましょう」
昨夜のプロポーズを受けた時点で、私は記憶がない状態でも彼を受け入れた。彼の妻になる決心をしたのだ。
これからも記憶喪失による弊害が出てくるかもしれない。それでもきっと、景虎となら頑張っていける。
私が首を縦に振ると、彼は柔らかく微笑む。
「じゃあ、式場の候補をリストアップしよう」
「見学の予約もしないとね」
私たちやっと、夫婦らしくなってきたかな。
目を合わせて笑いあう。それだけで、幸せが心を満たした。