旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
このままじゃメガネ先輩は昼休憩にも入れない。営業さんをいつまでも待たせるのも可哀想。彼らは待つのが仕事だと割り切っているとしても。
「ようし。じゃあ、あっちの応接室に場所を移そう」
メガネ先輩は庶務課受付窓口から外に出て、すぐそばにある応接室に場所を移す。応接室はパーテーションで仕切られており、二組同時に面接ができる。
「こんにちは。鳴宮と申します。どうぞおかけください」
「はじめまして。S社の鈴木と申します。よろしくお願いいたします」
社長一族だと思われたのか、メガネ先輩の後ろについていた時にはなかったくらい、やたら丁寧な言葉遣いで説明をしていく。
押し売りをするようなしつこい営業さんはほぼいなかった。これがメガネ先輩の狙いだったのかもしれないと、五人目を応対していて気づく。
ちゃんとした営業なら鳴宮姓に反応し、丁寧に話をしていくと思ったのだろう。メガネ先輩、意外に策略家。