旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 気がつくと、ピンクのカーテンに囲まれていた。顔だけを動かし、少し前のことを思い出す。

 あの男に腕を掴まれ、メガネ先輩が追い払ってくれて……そのあと、めまいと頭痛でクラクラしながら、医務室に向かった。付き添ってくれたのは庶務課の女性職員だ。

 ってことは、ここは医務室のベッド。職員さんに頭痛薬をもらって飲んで、何も考えないように気をつけて横になったんだった。

 腕時計を見ると、もうお昼になっていた。庶務課のみんなは休憩の時間だ。

 よくなったら戻るつもりで横になったのに、いつの間にか眠ってしまったみたい。おかげで頭痛はなくなっていた。

 上体を起こすと、ピンクのカーテンが揺らめいた。まさか、またあの男? 警戒して体がこわばる。

 予想に反し、カーテンを開けたのはあの男ではなかった。景虎が心配そうな顔をのぞかせていた。

「今起きたのか」

 私を起こしてはいけないと思ったのだろう。安堵の表情を浮かべ、彼はカーテンの隙間から身を滑り込ませた。

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