旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 それに、平日の昼から変装して元彼女を尋ねるなんて、暇じゃないとできない。

「なのにお前は今、別の男と住んでいる」

「なぜそれをご存知で?」

「街でお前に会う前から、探偵に居所を探させていたんだ」

 なるほど、だから視線を感じたりしたのか。そして、携帯の番号も庶務課に配属先が変わったことも、どこかからか情報が漏れた。

 そして、彼は景虎の存在も知っている。そう思うと、余計に身構えた。

 綾人が午前中凶暴な目つきで私に詰め寄ったのは、たぶん景虎が原因だ。私が浮気をしていて、急に逃げたとでも思っていたのだろう。

「あのう、証拠的なものはありますか? 私とあなたが婚約していたと言う証拠が」

 どうしても景虎と結婚していたということより、綾人と婚約していたということが信じられない。ふたりが言う結婚と婚約の期間が丸かぶりなのもおかしい。

 うちの厳しい両親が、そんなことを許すはずがないし、私の性格上二股とか結婚詐欺をするとは思えなかった。

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