旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「ごめんなさい。混乱していて」
胸のモヤモヤはおさまらないけど、かろうじてめまいや頭痛は出てこない。記憶喪失期間の写真を見ても、何も思い出せなかった。
「混乱するのも無理はない。お前は騙されているんだから」
「えっ?」
「一緒に住んでいる男のことも調べさせた。記憶を失ったのをいいことに、お前は俺との婚約を破棄され、あの男に嫁がされたんだ」
カップを持つ手が震えた。続きを聞くのが怖いのに、拒否できない。
「これは俺の予想だが、俺との婚約期間中に、あの男……鳴宮景虎からお前と結婚したいとご両親にオファーがあった。ご両親は、うちより実家の力が強い鳴宮とお前を結婚させたがった」
「嘘……」
「だから俺の意見なぞ聞かず、勝手に婚約破棄して、記憶喪失のお前に鳴宮が本当の夫だと嘘を吐いた」
とうとう私は頭を抱えた。彼の予想だから真実とは限らないとわかっている。なのに冷静になれない。
景虎や両親が嘘を吐いたなんて。しかも、そんな重大な嘘を。私がすんなり記憶を取り戻したら、いったいどうするつもりだったの?