旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「待って……」
未経験の少女でもあるまいに、無意識に彼の肩を押し返してしまった。
涙の膜が張った目を瞬きさせて見えたのは、彼の切なそうな顔だった。
その瞬間、胸に罪悪感が押し寄せる。
彼が強引なのではない。私が、夫である彼を忘れてしまったのがいけないんだ。だからそんなに悲しそうな顔をしないで。
「あ、あの……ごめんなさい。大丈夫だから……」
その後は恥ずかしくて、言えなかった。
彼は返事の代わりに軽くうなずくと、ゆっくり時間をかけて私の中に侵入を果たした。
久しぶりだからか、私の身体は初めて彼を受け入れるような痛みを覚える。が、すぐにそれは遠ざかっていった。
彼と過ごしてきた日々を思い出せない罪悪感も、初めて全てをさらけ出しているような不安も、彼に揺さぶられるうちに溶けて消えていく。
代わりに、彼への愛しさが次から次に目尻から溢れて、頬を滑り落ちていった。
私は強く彼の背中に回した手に力を込める。
ねえ、私の旦那様。
あなたのことを忘れたりして、私は悪い妻だね。