旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「なにも心配しなくていい。家事も仕事も休めるように、既に手配してある」
「えっ。鳴宮さんが、職場にまで連絡してくださったんですか?」
ビックリする私を見て、鳴宮さんはキョトンと目を丸くした。
「ああ、そうか。話していなかったっけ。君は俺と同じ会社で働いていたんだ」
笑いをこらえるような顔の鳴宮さんに、母が付け足した。
「この方はね、あなたが秘書をしていた社長さんのご子息。副社長さんよ」
「そうなの? じゃあ、いわゆる政略結婚ってやつ?」
うちは病院、彼の会社は医療機器メーカー。じゅうぶんに考えられる。
というか、そうでなければこれほどハイスペックな人と私が恋愛関係に陥るきっかけがないよね。
実家こそ大きな病院だけど、私自身はどこにでもいるような普通の人間だもの。見た目も中身も。
私の失礼な質問に、母は「こらっ」と憤り、鳴宮さんは余計に笑った。
「こんなところで立ち話もなんだし、とにかく帰ろう。君の質問に答えるから」
たしかに日差しはキツイし、空気はむわっとしているし、一刻も早くエアコンの効いた室内に入りたいところではある。
政略結婚にしては優しく、彼は私の手をひいて駐車場へエスコートする。
母を振り返ると、彼女は少しだけ心配そうに私を見ていた。