旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 鳴宮さんと二人で住んでいたというマンションに着いた私は、木偶の坊のように立ち尽くしていた。

「こんなすごい部屋に、見覚えありましぇ~ん……」

 ここは高層マンションの最上階。二部屋壁をぶち抜いて合体させたという我々の愛の巣は、ふたりでは広すぎるくらいだった。

 ダンスパーティーができそうなリビング、特大ダブルベッドが子供用に見える寝室。

 お風呂は露天になっているものと、完全室内と二つ。うちの父が喜びそうなバーカウンター、などなど……。セレブすぎる新居にあんぐりと口を開けるしかできない。

「君の実家だって、大したものだろ。都内一等地に建つ平屋の日本家屋じゃないか。しかも古山水の庭園とプール付きだったよな」

「いやいやいや……プールったって、子供がチャプチャプする用だったから。今はほとんど使ってないんですよ」

 私はすっかり、最新の高級マンションに見惚れていた。

 自分の部屋だという実感は湧いてこない。お呼ばれした客人の気持ちで、天井のファンを見上げる。
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