旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 リビングの真ん中でボーっとしていたら、お腹がぐううと鳴った。

 我に返ってお腹を押さえるけど、遅かった。鳴宮さんはぷっと吹き出した。

「もうすぐ昼食の時間だな」

 高そうな絵とともに壁に掛けられている時計を見ると、正午より三十分ほど早かった。

 病院の昼食が早く、だいたいこの時間だったから……と心の中で弁解する。

 ああ恥ずかしい。すごく食いしん坊みたいじゃない。

「そういえば私、料理はできたんでしょうか? お恥ずかしながら、二十歳の時点では、できなかったんですけども」

「敬語は使わなくていい。二十五歳現在の君も料理は得意じゃなかったから、心配するな」

 気負ってやらなくてもいいよという意味かしら。

 二十五歳の私よ……別の意味で心配だよ。

 今時料理はいつも妻がやるべし、なんて時代錯誤なことを言う旦那さんではないようで安心したけど。

「今後も、無理なことはやらなくていい」

「露天風呂のお掃除も?」

「あれこそ、素人には無理だろう」

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