旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
まるで普通の眠りから覚めるように、ごく自然にまぶたを開けた私を見て、病室の椅子に座っていた母は仰天した。
「か、看護師さーん! 誰かー!」
ナースコールを押せばいいのに、慌てた母は病室のドアを開け、ナースステーションに向かって叫んでいた。
私は何が起きているのかわからず、辺りを見回す。
と言っても首が痛くて動かない。触ってみると、むち打ちの人のようなギプスが自分の首に装着されていた。
腕に点滴が刺さっているので、多分ここは病院なのだろう……しかし、どうして自分が病院にいるのか。
思いだそうとすると、頭に鋭い痛みが走った。
痛んだ箇所を手で押さえると、ネットの感触がした。
「綾瀬さん。大丈夫ですか?」
入ってきた若い看護師さんが私をのぞきこむ。
大丈夫かって言われても……それは私が知りたい。
「はあ」
とりあえず返事をすると、看護師さんの後ろから白衣を着たお医者さんが現れた。
メガネをかけていて色白小太りの、飾り気のない真面目そうな先生だ。