旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 まるで普通の眠りから覚めるように、ごく自然にまぶたを開けた私を見て、病室の椅子に座っていた母は仰天した。

「か、看護師さーん! 誰かー!」

 ナースコールを押せばいいのに、慌てた母は病室のドアを開け、ナースステーションに向かって叫んでいた。

 私は何が起きているのかわからず、辺りを見回す。

 と言っても首が痛くて動かない。触ってみると、むち打ちの人のようなギプスが自分の首に装着されていた。

 腕に点滴が刺さっているので、多分ここは病院なのだろう……しかし、どうして自分が病院にいるのか。

 思いだそうとすると、頭に鋭い痛みが走った。

 痛んだ箇所を手で押さえると、ネットの感触がした。

綾瀬(あやせ)さん。大丈夫ですか?」

 入ってきた若い看護師さんが私をのぞきこむ。

 大丈夫かって言われても……それは私が知りたい。

「はあ」

 とりあえず返事をすると、看護師さんの後ろから白衣を着たお医者さんが現れた。

 メガネをかけていて色白小太りの、飾り気のない真面目そうな先生だ。

< 4 / 245 >

この作品をシェア

pagetop