旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
もう一度恋を始めよう
私は携帯でカレンダーの日付を数えていた。
「ここが事故に遭った日。入院が十日で……うわ。もう二週間も会社を休んでいるんだ」
初めて景虎のマンションに来てから、四日が経った。
仕事に行く彼を見送ったら、ほぼひとりの自由時間。
「これからずっと働かなくていいんですよ。羨ましいです~。私なんか、死ぬまで家政婦です~あははは~」
にこにこ笑って掃除機をかけるのは、ハウスキーパーの上田さん。
五十代前半の、ころころした体型で、ふわふわしたおばさんパーマが可愛い女性だ。
彼女はその体型からは想像できないくらい、汗だくになりながらよく働いてくれる。
上田さんのおかげで、私は家事をほぼせずに、まったり過ごしていた。
「うーん……このまま退職してしまうとしても、挨拶くらいは行かないと」
そう言う私に反応したのは、隣で新聞を読んでいた景虎。
「しばらく休めるように手配しておいたと言っただろ。退職届なら俺が出すから、君がわざわざ出向く必要はない」
「そういうわけにはいかないよ」
職場の人たちはお見舞いには来なかった。両親が面会人を拒否するように病棟に要請していたからだ。