旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
言い切ると、まためまいがした。考えすぎて頭の中の酸素が足りなくなったのかな。
「……私はダメだとは言いません。でも、それは家族とよく話し合って決めなさい」
室長は優しく言った。
「ここはリハビリ室じゃないって、佐原ちゃんに怒られるよ。もう少し療養してから復帰した方がいい。ね?」
原田さんは厳しくも、もっともな意見を投げかけてきた。
何か思いだそうとするたびに原因不明のめまいでフラフラしてるような秘書、たしかに邪魔だ。
ここはリハビリをする場所じゃない。仕事をする場所だ。
「私は記憶が戻るきっかけになればいいと思うけど……室長の言う通り、よく家族と主治医と話した方がいいかもね」
まだ名前を思い出せない三十代女性が、私を気の毒そうに見た。病人を憐れむような目をされ、ちょっと傷つく。
「そういえば、萌奈ちゃん! 副社長と結婚したんだってね!」
突然思い出したように原田さんが両手をパンと合わせる。
「え……?」