旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

「んー、じゃあ庶務課でいいからちょっと行ってみる」

 庶務課の人が聞いたら怒りそうなセリフだけど、私は別に庶務課を下に見ているわけじゃない。

 別の部署でもいい。一度見ただけでは何も感じなかったビルの外観やエレベーターの音など、何度も触れるうちになにか思いだせるかもしれない。

「そうか。人事に話しておくよ」

「ありがとう!」

 シャツをにぎりしめたままにそにそ笑う私をじっと見下ろし、景虎はぽんと頭に手を置いた。

「え……なに?」

 答える代わりに、頭をなでくりなでくりする彼。

「俺は結局、君に甘いんだよな」

 手を放され、ぐしゃぐしゃにされた髪を整えてやっと前を見ると、彼はシャツをしまいつつ部屋を出ていった。と思うと、すぐに帰ってくる。手には長方形の箱を持っていた。

「はい」

 テーブルの上に箱を置かれ、私は正面のソファに座る。景虎は隣に座った。

「なに?」

「開けてみろ」

 厚みのある箱に見覚えのあるリンゴのマークがついていたので、察しは付いた。

 それでも蓋を開けた瞬間、感動してしまう。
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