旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「携帯!」
「欲しがってただろ」
彼は私が携帯を持つのを渋っていると思っていたから、嬉しいサプライズだ。
「ありがと~!」
横にいた彼を抱きしめると、嬉しそうな「ふっ」という息の音が聞こえた。
もしや、照れてる?
「設定とか、何もしてないけど」
「大丈夫だよ。私スマホ世代だし」
ぱっと景虎から離れて携帯の充電ケーブルを繋ぎ、設定を開始する。
あらかた初期設定を終え、よく使っていたメッセージアプリをダウンロードする。
「前のアドレスやIDを入力してみよう」
アカウントの乗っ取り防止のため、引き継ぎは電話番号が変わった場合、簡単にはできないようになっている。
けど、もし事故に遭う前の自分が「故障時のための引き継ぎ設定」をしていたら、データが復旧する可能性もある。
旧メールアドレスとID、いくつも出てくる質問に答えると、無事に二十歳のときと同じアカウントにログインすることができた。
「よかった~」
両親や兄弟、大学の時の友達など、アイコンの写真は変わっていても、連絡先は残っていた。
二十五歳の私、アカウント残しておいてくれてありがとう。