旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「色というか……まあいい。気に入ったものがあってよかった」
「景虎は、お買い物しないの? 服とか」
彼は首を横に振った。
「ちょっと疲れたな。食べ物を買って帰りたい」
「あっ、そうか。写真撮ったものね」
私も重い衣装の影響で肩が凝っているし、普段履かない靴の影響でふくらはぎがパンパンだ。
仲良くエスカレーターに乗って地下に向かう途中、ふと気づく。
もしや、彼は私が疲れているだろうと気を使ってくれたのかな。
彼も慣れない衣装を着たけど、私よりは基礎体力があるはずだもの。
「気兼ねなく食べろよ。もう写真は撮ってしまったから、少し太ったって大丈夫だ」
食品フロアに降りると、あちこちからいい匂いが漂ってきた。
夕飯の惣菜だけじゃなく、パンやスイーツなど、色んなものが欲しくなる。
太ったって大丈夫って……景虎、私を甘やかしすぎじゃない?
彼は私のどこを、それほど気に入ったんだろう。
本好きなのがきっかけだったのは知っている。それ以降、私のどんなところを好きになってくれたのかな。
家に帰ってから聞いてみようと思い、ひとまず惣菜を選ぶことに集中した。