旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 デパートを出て駐車場まで歩く間、荷物はほぼ景虎が持ってくれた。私は化粧品しか持っていない。

「買いすぎちゃったね」

 結局、見る物見る物欲しくなり、惣菜だけでなくスイーツやお菓子を何種類も買ってしまった。

「上田さんへのおすそ分け分もあるからいいんだよ」

 そうそう、いつもお世話になっている上田さんに、美味しそうなチョコやクッキーを買ったんだった。

 ほんと、彼女がいなければ私たちは生活できていないよ。

 実の母よりお世話になってるもんなあ……子供が生まれたりしたら、一緒にお世話してくれるかな。離乳食も作ってほしい。

 まだ影も形もない赤ちゃんの想像をして、急に顔が熱くなった。

 やだ、私ったら。授かるためのあれこれをしていないのに、授かった後のことを考えるなんて。

「あ、本屋だ」

 彼が大型書店の前で足を止める。

「寄る?」

 本はネットでも買えるけど、読書好きとしてはやっぱり本屋さんが好きだ。

 インクの匂い、平積みされた新刊。思い浮かべるだけでワクワクする。
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