旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 特に大型書店は、歩くたびに新たな発見がある。まず新刊コーナーをざっと見て、色んなジャンルを渡り歩いて、気になった何冊かを適当に買う。

 ときには「表紙が綺麗だから」、そんな理由で中身もあらすじも確認せずに買い、とにかく読んでみる。

 すると有名でない作者の作品でも、すごく魂を打たれるものに出会ったりして、面白いのだ。

「いや、またにしよう」

 景虎は両手に持った食品に視線を送った。

 早く帰らないと悪くなってしまうものもある。

 私たちが本屋に足を踏み入れたら、長時間居座ることは必至。今日はそれができない。

 うなずき、また歩みを進めると……。

「萌奈?」

 後ろから呼ばれ、足が止まる。

「萌奈、萌奈だろう?」

 私の名前を連呼する男性の声。

 聞き覚えがあるような、ないような。

 心臓が跳ねあがり、脈拍が速くなる。指先が痛くなるほど緊張しているのが、自分でもわかった。

 汗ばむ手で景虎の手をギュッと握り、おそるおそる、後ろを振り返ったと、同時に。

「萌奈!」

 肩をつかまれた。

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