旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
至近距離で、ひとりの男性が私を険しい目で見つめていた。睨んでいると言ってもいいくらい。
景虎と同じくらいの年だろうか。長い前髪が額の真ん中で別れ、耳のところでくるんとカーブしている。
体に張り付くような半袖Tシャツからは、たくましい腕がのぞいている。手首にハワイアンジュエリーと高級時計が輝いていた。
「お前、この数日何をしていたんだ。急に連絡が取れなくなって、心配していたんだぞ!」
怒鳴るようにまくしたてる男性に、私は恐怖を覚えた。
言い返す言葉が見つからず、目を瞬かせる。
誰だろう、このひと。私のことを知っているようだけど……。
「実家に連絡したら、信じられないことを言われて……全部嘘だよな、萌奈」
詰め寄る彼から視線を逸らす。
必死に思いだそうとしても、思い出せない。
体が思い出すのを拒否するように、頭痛がしだした。何かで刺されるような痛みに、思わず目を閉じる。