こっちを見て。
そして文化祭準備期間として、俺達バレー部も何日か休みをもらえるようになった頃。
うちのクラスでは着々と制作に取り掛かっていた。
俺や野口も、部活が休みの日はクラスの出し物の準備を手伝っている。
「ぎゃー!はみ出したー!」
「うっせぇよ。雑なんだよお前は」
看板に絵の具を塗っていた野口が喚くと、周りのクラスメイトも笑い声を上げた。
こいつはほんとにバレーでも雑な部分が出るし、もう少し落ち着いてやれよ。
トス上げる俺の身にもなれ。
「支倉くん、塗るの上手だね〜」
「どうやったらそんなに上手く出来るのー?」
なぜか嬉しそうに俺が塗っていた看板を覗いてきた女子達。
その内の1人が流れるように俺の隣に近付いてくる。
ふわりと香水らしき香りが鼻をかすめた。
……鬱陶しい。
丁寧に細かく塗ってたら大体上手く塗れるだろ。
大体、そんなことで俺の所に集まってくるくらいなら黙って手を動かしてくれ。
「適当」
「えー適当って〜」
「コツとかないの?」
「別にないけど。ていうか自分の持ち場に戻ったら?作業まだ残ってるだろ」
「……ちぇー」
「怒られちゃった……。ほら行こ」
しょぼんと肩を落としてそれぞれの持ち場へ帰っていく女子達。
俺は溜息をついて再び手を動かした。