こっちを見て。
近くでは未だに野口が「あ!色間違えた!」等と喚いていて。
果たしてこんな調子で文化祭までに仕上げられるのか少し心配になった。
「順調?」
と、そんな声と一緒にまた俺の隣に誰かがしゃがみ込む気配がして。
顔を向けると、にこにこと嬉しそうにこちらを見つめる陽葵がいた。
「……俺は順調」
「さすが宗くんだねー。なんでも効率良くこなせちゃう」
「別に……そうでもないけど」
話しながら看板を塗り進めていると、陽葵は「えへへ」とまた嬉しそうに笑った。
……何がそんなに嬉しいんだよ。
「何」
「……え?」
「なんでそんなテンション高いの?」
「あー!だって、なんか嬉しいもんっ」
「だから何が」
「ほら、こうやって宗くんと文化祭の準備とか去年は出来なかったじゃん。今年は同じクラスになれて、色んなこと共有出来てるからすごく嬉しいの」
満面の笑みが近距離で見える。
白く人形のような頬に、笑うことによってえくぼが出来ていて。
世界中がこの笑顔を見たら争いなんかなくなるんじゃないかって、らしくもない考えが一瞬過ぎる。
……認めると、めちゃくちゃ可愛いと思ってしまった。