こっちを見て。
「ナニナニ?なんの話?」
ふと、そこで先輩が倉庫内にボールを持って入って来た。
俺はぎょっと固まってしまう。
「いや〜恋バナですよ先輩〜」
「え!?恋バナ!?もしかして支倉の!?」
えらく食い付いてきた先輩。
おい冗談じゃないぞ。
「違いますよ。野口の恋愛話です」
「あ、野口の?なーんだ」
「ちょ!なんで俺だとそんなつまらなそうな感じなんスか!?俺の恋バナも興味持って下さいよ〜!」
「えぇ〜野口のはレア感ねぇし〜」
先輩の肩を揺する野口を眺めながら、密かにほっとする。
なんとか上手く避けられた。
他の部員に知られたら一瞬で噂が回ってしまうところだった。
自分で陽葵に言う前に知られてしまうなんて失態は絶対嫌だ。
……自分で陽葵に言う、か。
やっぱり、言うしかないよな。
それで上手くいく確証なんてないけど。
何もせず、後悔するのだけは御免だ。
……でもいつ言えばいい?
今の陽葵に言うべきではないよな。
絶対混乱するだろ、あいつ。
だからと言って文化祭の日まで待つのか?
何もせず?
……はぁ、分かんねぇ。