こっちを見て。
「やっぱり宗くん器用だね〜!」
完成した看板をキラキラした目で眺めながら、陽葵は感嘆の声を上げる。
文化祭当日を目前にして、ようやく最後の看板が完成したのだ。
全般的に手伝ってたつもりが、器用だからという理由で気付けば俺は看板製作担当になっていた。
まあこういう作業は苦手じゃないからいいけど。
黙々と出来るし。
「ゾッとするような書体で怖さもマシマシだね!」
「……何言ってんだよ」
「あはは、ラーメンみたいだね!」
無邪気な笑顔に、自然と頬が緩む。
意味は分からないけど、なぜか可愛いと思ってしまう。
馬鹿なだけなのに、愛おしさを感じる。
……俺やっぱりどうかしてるな。
「咲花さん、最終確認したいんだけど大丈夫?」
と、そこで松川が陽葵に声を掛けてきた。
陽葵はそんな松川の声に一瞬固まる。
しかしすぐにいつも通りの笑顔を作って松川を振り返ったのだ。
「うん!大丈夫!」
じゃあね、宗くん!と笑顔で言い残して陽葵は松川とともに離れて行った。
……完全に意識してたな、陽葵。
陽葵もあんな風に自然と振る舞えるのかよ。
意外とできるなあいつ。
……ていうか、松川狙ってないか?
俺と陽葵が一緒にいるところで声を掛けるタイミングが多い気がする。
いや、気にし過ぎか。
どちらにせよ俺にとって気に食わない。