こっちを見て。
ようやく文化祭準備が全て整い、クラス内は拍手で包まれた。
ここまで順調に進められたのは、実行委員2人のおかげだとクラスメイトは賞賛の声を送る。
「じゃあ皆、明日はよろしくお願いします」
「頑張ろーねー!」
松川と陽葵の言葉で締め括られ、俺達は帰り支度を始める。
俺は荷物をまとめたあと、すぐさま陽葵のもとへ向かった。
「陽葵」
「あ、宗くん!お疲れ様!」
文化祭の書類らしきものを鞄にしまいながら、陽葵は眩しい笑顔で俺を振り返った。
犬の尻尾と耳が見えてきそうだ。
「帰るぞ」
「うん!あれ?そういえば野口くんは?」
教室内をきょろっと見渡しながら陽葵は首を傾げる。
いつもは俺と陽葵と野口の3人で帰っていた為だろう。
「家の用事あるから先帰ってる。多分連絡してから帰ってると思うけど」
「あれれ、そうだっけ?バタバタしてて抜けちゃってたかも」
「まあいいよ、疲れたし早く帰ろ」
俺はそう言って教室のドアへ向かって歩き出した。
後ろからパタパタと陽葵がついてくる足音がして、少しだけそれが愛しく感じた。
……犬じゃん。