こっちを見て。
――「明日楽しみだねぇ〜」
「……そうだな」
2人で暗くなった帰り道を歩きながら、そんな会話をする。
……楽しみなのか。
それは〝文化祭が〟ってことだよな。
呑気な奴。
俺は松川が気になって仕方ないっていうのに。
ていうか陽葵、忘れてないだろうな。
なんか松川と普通に話してたけど。
お前あいつに告白されてるんだぞ。
「うふふ」
「……何笑ってんの」
「なんかねー、宗くんとこうやって2人で帰るの久しぶりだから嬉しくって」
……。
ほんとに、こいつは。
そんな恥ずかしいことよくさらっと言えるな。
「あ!でもでも、野口くんと3人で帰るのも楽しいよ!?」
「いや、別に野口に気遣わなくていいだろ今のは」
「あれ、そうかな?」
……馬鹿。
俺のことはほんとにただの幼馴染としてしか思ってないんだ。
……意識させるって、どうやるんだよ。
「陽葵」
「む?」
「お前、好きな奴いんの?」
陽葵は俺の言葉を聞いてテレビみたいにずっこけた。
明らか過ぎるだろその動揺。
割と覚悟を決めて聞いたのに、拍子抜けしたわ。
「……え、なんで!?」
「別に。ふと気になっただけ」
「そ、そっか……」
なんだか気まずそうに目を泳がせて、少し頬を赤らめる陽葵。
わけが分からない。