こっちを見て。



「そ、宗くん……いるんだ、好きな人……」


「だから気になる奴だって」


「あ、『気になる奴』か……。でもいるんだぁ……」




どこまで驚いてんだよ。

そんなに意外か?


……まあ少し前まで恋愛なんてこれっぽっちも興味なかったけど。


確かに驚くのも無理はない。



ていうかなんだよ『気になる奴』って。

意地張り過ぎてかっこ悪いわ。




「えっと……ねぇ、聞いてもいい?」


「何」


「その人ってどんな人?」


「……」




純粋な目でそう尋ねてきた陽葵を、じっと睨むように見た。


……こいつは鈍感だし、少しくらいなら言ってもバレないだろうな。




「陽葵みたいに馬鹿な人」


「えっ!?ひ、ひどいよぉ」


「例えるなら……犬かな」


「犬!?」




頭にはてなマークを浮かべて首を傾げる陽葵。



……馬鹿か。

そういうところが犬っぽいんだって。




「宗くんって猫派じゃなかったっけ?」


「は?そういう話じゃないだろ」


「あ、そっか」


「……まあいつか分かるんじゃね」


「えぇ、分かるかなぁ」




しゅーんと落ち込んだような表情で俺を見つめる陽葵、まさに捨てられた子犬のようだった。



……分かってくれたら苦労しない。


早く気付いてくれ。

馬鹿陽葵。


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