こっちを見て。








迎えた文化祭当日。


今更だけど、俺達のクラスの出し物は『お化け屋敷』だ。

思ったより客の反応が良く、かなり話題を生んでいるようで。





「お化け屋敷ってどこですか〜?」
「あたし達怖いんで、一緒に入ってくださーい!」




キャッキャと騒ぐ女子達は俺を囲って行く手を阻む。


……めんどくさい。



クラスの奴らに「支倉は客寄せ頼む」って言われて、まあ楽そうだし良いかと思って回ってたけど。

こういうことか。




「怖いなら来なくていいです」


「……え、はい?君、客寄せしてるんだよね?」
「来なくていいって……」


「案内はしますけど、入るのはご自分達だけでどうぞ」


「えー冷たーい」
「かっこいいのにつれないなぁ」



行こ行こーっと女子達は口を尖らせながら去って行く。


ふん。

あんな連中に来られても迷惑だ。



……でもまあ、仕事はしないとな。




「お、支倉じゃん。客寄せしてんの?」


「あ……先輩」




バレー部の先輩方は俺にぞろぞろと集まって来た。

良いタイミング。




「そうですよ。なので先輩もお化け屋敷来てください」


「お化け屋敷かー。面白そうだし行くか」
「いいね。野口もいるんだろ?」


「はい。お化け役で」


「ぷっ、野口が人をビビらせれるんかな」
「逆に驚かしてやろーぜ」
「案内してよ、支倉」


「分かりました」




よし、これで仕事は果たした。


もうすぐ午前の部も終わるし、このまま戻っても問題ないだろう。



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