こっちを見て。
「陽葵」
「うん?どうしたの宗くん」
「文化祭、俺と回ろ」
真っ直ぐ、陽葵を見つめてそう伝える。
陽葵も野口も、驚いたのか少しの間何も言葉を発さなかった。
「……え?私と?」
「待って、俺は?宗司きゅん俺のこと忘れてます?」
「ごめん野口、悪いけど他の奴と回って」
「……はっ、宗司が俺に謝った……!
まっ、宗司がそこまで言うなら俺は全然いーけど!」
じゃー楽しんで!と野口はニコニコしながら俺達の前から去って行く。
……単純だけど、あいつも良い奴だ。
こんな俺と友達になってくれてるし。
今度ジュースでも奢ろう。
「野口くん……良かったの?」
「大丈夫。あいつ友達多いし」
「そっか……?なら良かった」
「で、回ってくれんの?」
「……あ、うん!全然良いよ!」
パッと花が咲くように明るい笑顔を浮かべてくれた陽葵に、ほっと安心する。
松川が陽葵に告白するまであと少し。
その間、俺に何が出来るだろうか。
とにかく今は……陽葵と一緒にいたい。
少しでも陽葵に意識してもらわないと始まらないんだ。