こっちを見て。




「あ、いたいた!陽葵ちゃーん!」




と、そこでクラスメイトが陽葵を呼びに来た。

その後からぞろぞろと数人クラスメイトが集まってきて、その中に松川もいることに気付く。


……なんだ?




「やっぱりあたしらで話し合ったんだけど、陽葵ちゃんと松川くん2人で文化祭回って来なよ!」


「え……?」




きょとんとする陽葵。



は?

何を勝手に……。




「2人とも実行委員ですごく働いてくれたしさ、お礼も兼ねてるんだよ。だから松川くんは午後班入らずに陽葵ちゃんと遊んで来な!」


「俺だけ働いてないの悪いよ……」


「いーのいーの、松川くんは準備期間バリバリ働いてくれてたんだから!」




わいわいと楽しそうに騒ぐクラスメイトを呆然と眺める。


不快感と、焦燥感と、不安感とが入り交じって顔が歪んでいく。



……陽葵は、さっき俺と回る約束したんだけど。


なんだよこの流れ。

そんなに陽葵と松川をくっ付けたいのかよ。


……ていうか、俺以外にはこの2人がお似合いに見えるってこと?

この2人が両想いに見えるっていうのかよ。




「えーと……ごめん、私……」


「あれ、もしかして回る子決まってた?じゃあその子にはこういう経緯で回れなくなったって言ってくれて良いよ〜」




……ふざけんな。

納得出来るかよ、そんな理由で。


勝手に自分らの善意を押し付けやがって。

人の気持ちも考えろ。



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