こっちを見て。
「悪いけど」
俺は陽葵の腕を掴んで隣に立った。
それまで陽葵に集まっていたクラスメイトの視線は一気に俺に集まって、
「え、支倉くん?」とざわつきだす。
「陽葵は俺と回るから」
「……え、うそ」
「支倉くんと!?」
「じゃ」
俺は陽葵の腕を掴んだまま、クラスメイト達の前から立ち去る。
背中越しに「ギャー!」「嘘でしょ!?」と女子達が騒ぐ声が聞こえたけど、俺は完全に無視して歩き続けた。
我ながら、とんでもないことをした。
これならすぐにでも俺達が付き合っている疑惑の噂が出回りそうだ。
……まあ、松川と陽葵が2人で文化祭回るよりマシだけど。
「そ、宗くん……!いいの?」
「何が」
「皆絶対騒ぐよ?宗くんそういうの嫌いなんじゃ……」
「……まあ」
嫌いだけど。
でも、そんなことはどうでも良くなった。
陽葵のことしか考えてなかった。
「陽葵は松川と回りたかったのか」
「えっ、そんなこと…………あ、いや……えっと……」
「……」
陽葵にしては歯切れが悪い。
なんだこのモヤモヤ感。
なんで陽葵がそんな風になるんだよ。
……まさかほんとに松川と回りたかったって言うのか?
でも俺が先に誘ったから。
断り切れなくて……ってこと?
「……無理」
「えっ?」
「こっち来て」
俺は陽葵の腕を掴んだまま階段を上り始めた。
くそっ。
細くて柔らかい陽葵の腕に、なんでこんなにドキドキしなきゃならないんだよ。
もう限界だ。