こっちを見て。
「松川くん……良い人だね」
「……そうだな」
「松川くんの為にも、幸せにならなきゃだね!」
「……」
なんで松川の為に、なんだよ。
お人好しか。
「えっと、じゃあ文化祭見て回る?」
「……」
「宗くん?」
可愛らしい顔がこちらに向けられて、俺はじっと見つめ返した。
俺の気持ちに早く気付けばって思ってたけど、気付くのが遅かったのは俺だったわけか。
俺はもっと素直になるべきなんだろうか。
こんな鈍感な陽葵には、ちゃんと言葉と行動で気持ちを伝える必要がありそうだ。
「陽葵」
「ふぇ?」
「手、繋いで回るか」
「……え」
「どうせ騒がれてんだし、付き合ってることを手っ取り早く周知させられる」
「あ、なるほど。……でも、なんか宗くんからそんな風に言ってくれるなんてびっくり」
むしろ嫌がりそうなのに、と陽葵はまじまじと俺の顔を覗き込んできた。
まあ、確かに。
「これからはもっと積極的にいくことにした」
「積極的……?」
「覚悟しといて」
俺は陽葵の頭に手を添えてそのまま抱き寄せた。
おでこがコツンと当たり、再び陽葵の顔は真っ赤になる。
反応が可愛過ぎるだろ。
「かっかか、覚悟って!」
「しゃー、行くぞー」
陽葵の小さな手を握り、俺は屋上の扉を開いた。
きっとこれからもっとめんどくさいことが起きるんだろうけど、
まあなんとかなるだろ。
陽葵と一緒なんだから。
-enb.-