こっちを見て。
――部活が終わって外に出てみると、既に辺りは薄暗くなっていた。
俺は自転車を取りに行った野口を校門で待っている。
と、
「……あ」
見慣れた黒髪が目に入った。
俺の声に気付いたのか、彼女はこちらに顔を向ける。
「あ、宗くん!」
彼女はぱあっと明るい笑顔で俺に向かって駆け寄って来た。
その後ろには同じクラスの男子が1人付いてきている。
俺はそいつを一瞥してから目の前の彼女に視線を移す。
「……今から帰んの?」
「うん。文化祭の打ち合わせしてたらこんな時間になっちゃって。宗くんも部活終わり?」
「うん」
「そっかぁ、お疲れ様!」
純真無垢な笑顔が惜しみなく向けられる。
俺はそんな彼女に少し頬を緩めた。
彼女は咲花陽葵。
俺の幼馴染だ。
警戒心という言葉を知らないんじゃないかってくらい天然でフレンドリーな奴。
クラスでも男女ともに好かれるような存在で。
言うなれば俺とは真逆な性格だ。
「もう暗いけど、1人で帰るのは危なくないか」
「あ、それなら大丈夫!松川くんが送ってくれるの」
陽葵はそう言って後ろに立っていた同じクラスの松川へ視線を送った。
松川はにこりと笑って軽く会釈をしてみせる。
……なんで松川なんだよ。