こっちを見て。
「こんな時間まで咲花さんを打ち合わせに付き合わせちゃったし、責任持って俺が送ろうと思って」
俺のしかめっ面に気付いたのか、松川は爽やかに俺に説明してくれた。
そういえば陽葵と松川がうちのクラスの文化祭実行委員だったっけ。
忘れてた。
「……ふーん」
「宗くん心配してくれたんだよね?ありがとう!それじゃあ、また明日ねっ」
「……うん」
ぶんぶんと大きく手を振る陽葵に、軽く手を上げて返事をした。
彼女達が見えなくなったところで、やっと野口が自転車に乗ってやって来る。
「おっまたっせ〜」
「遅せぇよ」
「いてっ、え……なんで叩く?そんな遅かった!?」
「うるせぇ」
「ちょ……あまりにも理不尽じゃない!?」
「置いてくぞ」
「あっ、待てよー!」
喚く野口を振り返らずに俺はすたすたと歩き出す。
なんとなく、陽葵達が通ったであろう道を避けて行くことにした。
「なんか宗司イライラしてね?」
「別に。してない」
「ほらしてる!八つ当たりされる俺の身にもなれよ〜」
「あースミマセンネ」
「全然心こもってないし!」
……別にイライラなんてしない。
少しだけ、陽葵と松川のことが気になってるだけだ。
きっと、陽葵が無事に帰れてるか心配してるだけだと思うけど。